少女の体を洗ってやりながら、マーサはあることを決めた。

―――この子の様子が落ち着いてから、話をしてみよう。



 本当はすぐにでも色々と尋ねてみたかったのだけれど、不安に震える少女にあれこれ聞き出すのは酷に思えたのだ。


 だから、今は何も聞けなかった。



 それと、全身真っ白な泡に包まれて気持ちよさそうな少女の屈託のない笑顔を見ているうちに、少女の過去に関する事はとりあえず置いておく事にしようと考え始めていた。
 

 素性の知れない不思議な少女だが、これほどまでに無邪気な微笑みを浮かべる顔を見て、マーサにはこの少女が邪しき子には思えなかった。


 時機を見て、あれこれと聞き出さなくてはならないだろう―――少女を家族に引き合わせるためにも。

 

 でも、それは今すぐにではなくても良いだろうと、マーサは思ったのだった。