「大丈夫?」 俺が聞くと、芹梨は笑顔で頷いて、鞄を持って外へ向かった。 その背中を、俺以外にも何人か他のテーブルの男の目が追いかけたことに気付く。 酔ってる風ではなかったし、多分芹梨自体は大丈夫なんだろう。 だけど、ここは飲み屋が連なる繁華街。 芹梨『が』じゃなくて、芹梨『を』放っておかない連中はきっといるはずだ。 ましてや芹梨は話せない。より一層、不安が増す。 「ちょっと、出てくるわ」 俺は隣の紺に軽く耳打ちして、立ち上がる。 軽く早足で、さっき芹梨が出ていったドアへと向かった。