僕のミューズ


見た感じ、強そうには全く見えない。
半信半疑な俺に、芹梨は少し勝ち誇った顔で、アルコールメニューを指差した。

相変わらず綺麗な指先が示すのは、順に、ビール、赤ワイン、ハイボール。

最後にもう一度ビールを指差して、空になった自分のグラスに指を向けた。

「今日…飲んだの?」

女の子が好きなカクテルがひとつもないプログラムだ。
芹梨はニコッと笑って、大きく頷いた。
そしてその指で、ピースのサインを作る。

ちょっと考えて、俺は目を丸くした。

「もしかして…二杯ずつ?」

芹梨はそのピースの指先をいたずらに折り曲げて見せて、これまた自慢気に笑った。
成る程、強いと言うだけはある。

「やるね」

俺もニッと笑って見せ、またひとつ芹梨のカードが捲れたと感じていた。

どうやら彼女は、イメージ通りとはいかないみたいだ。

『でも、』

そんな俺の前で芹梨は、再び紙ナプキンにペンを走らせる。

『少し休けい。外の空気すってくるね』

休憩の『憩』の字がわからなかったのか、そこで少し迷っていたが、結局平仮名で書いて立ち上がった。