「は、るか」 …一瞬。 一瞬、本当に、全ての時が止まった。 俺は瞬きを忘れ、今聞いたその声をゆっくりと反芻させる。 今。今、確かに芹梨は。 「はるか」 もう一度その声を聞いて、俺は一気に目頭が熱くなるのを感じた。 腕の中の芹梨の声。 震えて、涙声だけど、それは確かに彼女の声。 俺の名前を、呼ぶ声。 俺はそのまま、力強く芹梨を抱きしめた。