その言葉を見た瞬間、俺の中の何かが反転した。
目の前で肩を震わせてうずくまる芹梨。
俺はゆっくりとその肩に触れる。
一瞬芹梨の体は強ばったが、再びその細い体が揺れる。
目の前にいるのは、ひとりの女の子だった。
たった一人の、弱くて小さな、女の子。
白いドレスも濃いメイクも何もない。
まっさらな芹梨が、そこにはいた。
俺はさっき手にしていたジャケットをその肩にかけた。
芹梨は声を出さずに泣いている。
俺は戸惑いながらも、その肩をゆっくりと引き寄せた。
俺の腕に収まった芹梨は、さっきよりより体を震わせる。
その口からは、小さく泣き声が漏れていた。
「芹梨…」
俺は耳元でその名前を呼ぶ。
聞こえてはいないが、返事をしたかのように鼻をすすった。
そしてゆっくりと、その喉を震わせたんだ。



