「芹梨…」
『描いてよ』
震える指で、そう、小さく呟く。
『描いてよ。あたしの為のドレス、描いてよ』
震えながら、涙を流しながら、でも意志の強い目で、芹梨は俺に言った。
『世界が違うって、何よ。勝手に変えないでよ。あたしは何も変わってないもん。ずっと遥のドレスを着たいって、それだけをずっと思ってきたんだよ。描けないなら、あの日のあたしが邪魔すするなら、脱ぐもん。何も着ないもん。まっさらなあたしを見せるから、だから描いてよ!』
空気を切り裂く様なその手話は、俺の心臓のど真ん中に突き刺さる。
それは芹梨自身にも突き刺さっているのか、顔を歪めて唇を噛みしめて、芹梨は何かに耐えるような表情で吐き出した。
『…あたし以外の子のドレスなんて、描こうとしないで』



