「降ろすとか…そんな事言えた立場じゃねえよ」
自嘲気味に笑って、俺は言った。
「芹梨は元々こっち側にいていい人間じゃないんだよ。俺の作るお遊びみたいなドレスなんかじゃなくて、もっと…もっと本物のドレスを着なきゃいけない人間なんだ」
そう言う俺の口元を見ながら、芹梨の表情が少し揺れた事に気付く。
それでも俺は気付かないふりをして続けた。
「ショーのモデルは他に見つける。見つからなかったら、あかりもいるし。芹梨は、俺らの遊びになんか構ってないで自分の仕事の方を…」
『遊びとか言わないで』
早口で綴った俺の言葉を、その細い手が遮った。
俺が黙ると訪れる沈黙。
それでも二人の間には、刺すような嫌な音が響いていた。
「…遊びだよ」
『違う。だって遥のドレスは、ほんとに綺麗で…』
「あの日、芹梨が着てたドレスより?」
はっと息を吐き出すかのように笑って、俺はため込んでいたものが流れ出したかの様に声を荒げて言った。



