『家の近くにいるから、行ってよかったら行く』
そのメールを見ながら、俺はその時が近づいている事を知る。
このまま逃げているわけにはいかない。
いつかは芹梨と、ちゃんと向き合わなければいけないんだ。
俺はひとつ深呼吸をして、ベッドの横にかけてあったジャケットを手にして家のドアへ向かった。
近くにいるという芹梨を迎えに行こうとドアを開ける。
冬の冷えた空気が一気に部屋へと舞い込む。
同時に、視界に飛び込んで来たのは、見覚えのあるコート。
マンションの階段の下、白い手で携帯を握っているのは、紛れもなく芹梨だった。
その後ろ姿を見たのは久しぶりな気がする。
夜の薄暗い闇に溶けそうな細い背中が、俺の胸を痛めつけた。
手に持ったジャケットは羽織らず、俺はそのまま階段を降りる。
かんかんと冷えた音が響くが、芹梨が振り向く事はない。
すぐ側に来てようやく、その顔がこっちを向いた。
久しぶりに、芹梨と目が合う。
前髪が少し伸びた気が、した。



