僕のミューズ




…目を閉じた先に、何か夢を見た気がする。

一本の長い白い道。
そこに一歩足を踏み出す度に、俺の黒い足跡が残る。

汚したくない。

俺は思わず立ち止まる。

でもその先の扉から、俺を呼ぶ声がするんだ。

声?いや、違う。
だって俺は、彼女の声を、知らない。

彼女?

俺はゆっくりと黒い足跡から顔を上げた。

白い道の先、小さな扉の前に立つのは、初めて出会った時の芹梨。

首もとのスカーフが、風もないのにひらりと舞う。


…芹梨。


呼びたかった。

呼びたかったが、どうしても声が出ない。


芹梨は、俺の顔を見て、少しだけ笑った。

笑った笑顔が、どこか寂しかった。