…………… その日、俺は芹梨を抱いた。 暗闇の中、芹梨は一言も言葉を発さない。 いつも言葉を紡ぐ指先が、俺の背中に刺さっている。 その指先をそっと手に取り、綺麗な爪を一本一本口に含む。 芹梨の肩が小さく揺れたのを感じ、俺はより深くその指に舌を絡ませた。 深く、深く。 芹梨の言葉を全て、俺の中に吸収するように。 誰もわからなければいい。 俺だけが、芹梨の言葉をわかれば、それでいいのに。 暗闇の中、俺は一度も芹梨の目を見ようとしなかった。