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夕焼けが随分早くなったと思う。
俺は先輩と登ったビルの階段で一人腰掛けていた。
あれから芹梨の撮影を抜け出して、コンビニでコーヒーを買ってずっとここに腰掛けている。
傷ついている?違う。そんな単純な言葉じゃない。
俺はずっと、芹梨を見てきた。
最初のショーの時から、芹梨だけをずっと見てきたんだ。
だから嫌と言うほどわかる。
芹梨がどれだけの魅力を持っているのか。
どれだけ万人を引きつけるオーラを兼ね備えているのか。
わかっているはずだった。
なのに、この焦燥感は何なのだろう。
俺はコーヒーの缶に吸いかけの煙草を落とす。缶の奥でジュッと火が消える音がした。



