仰向けに横たわったまま、顔だけはカメラに向けている。
少し挑発的なその表情は、恐らくメイクのせいでもあるけれど。
右膝を立てていたが、フラッシュに合わせて逆の足を立てる。
その動きに合わせてドレスの裾が揺れ、一層妖艶な美しさを引き立てる。
その細くしなやかな両腕を使い、たまに花びらを舞わせてみたり、頭の上に持ってきて自分の髪をつまんでみたり。
まるで、気高い気ままな猫のよう。
赤い唇が時折弧を描いたり、半開きになったりする度に、俺は何とも言えない焦燥と高揚を繰り返す。
そこにいるのは、芹梨であり、芹梨ではなかった。
真っ白な世界にも、眩しいフラッシュにも、彼女は動かない。
他の誰でもない、彼女の為の世界だから。
このスタジオにいる沢山の人間は、まるでこの世界の下僕だ。
芹梨の為に、芹梨をより輝かせる為だけに、あの白い世界とは対象の暗い世界で働く。
でも、それでもまだましだ。
ただ、圧倒され、傍観しているだけの俺に比べたら。
フラッシュがたかれる度に、俺は顔をしかめる。
眩しい。眩しすぎて、芹梨の姿が見えない。
…見えない、芹梨が。
俺は固く目を閉じて、光に耐えた。
眩しい世界の片隅で、俺は、自分の陰すら見えない深い暗闇にいた。



