僕のミューズ


…連絡をくれたのは、他でもない高橋先輩だった。

メールの文面は相変わらずシンプルで、芹梨の仕事ぶりと今の状況、そして、芹梨の撮影を一度見に来ないかという用件だけだった。

理由はそんなに深くはない。
たまたま先輩は別件の仕事で芹梨の撮影日と同じ日にスタジオに行くという事になり、俺を誘ってくれたという訳で。

俺のコネでスタジオ入れるなんてあんまないぞ、なんて軽く誘ってくれるもんだから、断るにも断れなかった。

俺はなるべく平静を装ってその日を迎えた。
内心、自分の気持ちすらわからないままだったけれど。


「遥!こっちこっち」

先輩から言われたカフェの近くで立ち往生していると、信号の向こうで先輩が手を振っているのが見えた。

俺は軽く会釈して、信号が変わるのを待ってそこへ向かう。

「わりぃな、ちょっと仕事押してて遅刻」
「いや、全然大丈夫っす。それより…今日、ありがとうございました」

誘ってくれたのにお礼も言わないのは失礼だと思い、俺は会って早々に先輩に頭を下げた。

先輩は笑って「いや、ほんのお礼だよ」と言い歩き出した。
俺はその背中を追いかけながら、「お礼?」と聞く。