『正直…驚いているっていうのが、素直な気持ち。驚いたっていうか…戸惑ってるっていうか…』
いつもより手話がゆっくりで、だからこそその戸惑いを俺も感じ取ることができた。
芹梨の気持ちはわかる。高橋先輩も芹梨がこうなることを予想して、俺に事前にこの話を伝えていたのだ。
だったら俺から言うことは、一つしかない。
「芹梨」
俯いた芹梨の目の前で、芹梨の名前を呼ぶ。
彼女の揺れる瞳が俺の方を向く。
俺は、ちゃんと笑えてるだろうか。
「やってみようよ。せっかくのチャンスじゃん。勿論、芹梨がやりたくないなら辞めたらいいけど…芹梨、やってみたいんだろ?やりたいけど、自分で大丈夫なのか、自信がないんだろ?」
俺の言葉に、一瞬芹梨の眉間にしわが寄った。
でもすぐに力を抜いて、こくんと小さく頷く。
これが、芹梨の答えだ。
「大丈夫。もし失敗しても、逃げたくなっても、芹梨のことは、俺が迎えるから。俺が絶対、近くにいるから。だから…」
近くにいる。芹梨の小さな瞳の動きもすぐわかるくらい、一番近くにいるから。
…いさせて、欲しいから。
「頑張ってみたら」
俺の言葉を一心に見つめていた芹梨は、少しだけ目の縁を赤くさせて、でも絶対に涙は見せなかった。
淡いピンク色の唇をしっかりと結んで、強く、強く頷いたんだ。



