僕のミューズ



「柏木芹梨って、知ってるよな」


俺は全く予想していなかった話題に、思わずコーヒーをこぼしそうになる。

「え…」
「俺たちのショーでモデルやってくれた子だよな、遥が見つけた」

突然すぎてどう答えていいかわからない俺に、「そう困った顔するなよ」と先輩は苦笑した。
俺はさぞかしおかしな表情をしていたのだろう。

「そう…ですけど。芹梨が、何か…」
「いや、直接遥に関係する話じゃないとは思うんだけどな」

そう一言添えて、先輩は続けた。

「最近、彼女モデル事務所のオーディション受けたのは、知ってる?」

なぜ先輩がその事実を知っているのか。俺の脳裏に様々なクエスチョンマークが浮かんでいる事を悟ってか、先輩は「何で知ってるんだって顔してるな」と笑う。

「俺にしてみたら何で遥が芹梨ちゃんに詳しいのかって話だけど…まあ、その辺は想像つくから。付き合ってるの?」
「へ!?」
「はは、あの日遥が芹梨ちゃんの事気に入ってるのは一目瞭然だったからな。遥なら女の子落とすのも簡単だろうし」
「いや、芹梨の事はそんな簡単とか…」
「わかってるよ。すぐそうやって突っかかってくるとこちっとも変わってねえなぁ」

俺にしてみたら先輩が何を言いたいのかちっともわからず困惑しているのだが、相変わらず先輩はマイペースにコーヒーを飲んで、ようやく核心を話し始めた。