僕のミューズ


『どっかでね、駄目なんじゃないかなって思ってた。オーディションの時ね、聞かれた事・・・ほとんど、耳の事だったんだ』


・・・そう、芹梨の耳。

モデルの仕事が難聴者にとってどれだけハンデになるのか、俺は正直わからなかった。

でも、少なくとも万人の目に晒される仕事。
芹梨の耳が、リスキーなものであることに変わりはないんじゃないかと思っていたのだ。

そう思っていた自分に腹が立つ。
芹梨は、自分の全部を使って立ち向かったのに。

「・・・芹梨」

俺は、芹梨に一冊のスケッチブックを差し出した。

うつむき加減だった芹梨の視線が上を向く。

彼女はそれが何なのかをすぐに察知し、両手でゆっくりと受け取った。

芹梨の綺麗な手話がそのスケッチブックの中身を告げる。


『・・・ショーの、ドレス?』