僕のミューズ


人はほぼ一階のフロアに集まっていたから、講堂のあるフロアはひっそりとしていた。

廊下を走る俺の靴音と蝉の声だけが響いている。

講堂に着いた俺は、上がった呼吸を整えてゆっくりとドアを開ける。

ぎぃっと重い音が響き、目の前にはしんと静まり返った講堂が広がる。

一階と二階に観客席。
それに取り囲まれるように真っ直ぐ静かに伸びる、ランウェイ。


俺はその端に、目を奪われた。


ランウェイの端、真っ直ぐに立って客席を臨むその背中。

俺がドアを開けて入ってきた事に気付いていないのか、微動だにしない。

黒髪はいつもの様に綺麗に真っ直ぐ伸びていた。

襟つきのレースワンピからすっと伸びた足はきちんと揃って前を向いている。


シンプルなその姿が、何故かとても綺麗に見えた。


俺はゆっくりとステージに上がり、反対側のランウェイの端に立つ。

こうして見ると、思ったよりもランウェイは長い。

一歩一歩、モデルはドレスが出来上がるまでの道を全て抱えて歩くのだ。

ドレスの集大成。
それを全て背負って、笑顔で歩く。