僕のミューズ


耳が聞こえない。

それがどれだけのハンデを背負うものなのか。

モデルだけじゃない。
多分、何をするにも、何を始めるにも、『普通』の人の何倍も勇気を要するものなんだ。


芹梨が頑なにモデルを断る理由。

多分、それだけじゃないんだろうけど。

…でも。


「どれだけ難しくても…芹梨しかいない。芹梨の耳が聞こえない事が大きなハンデを背負うなら…俺が、それを全部帳消しにするくらいのドレスを作る」


真っ直ぐにあかりの目を見て言う俺の言葉を、あかりもまた、反らす事なく受け取る。



「芹梨がいなきゃ、今の俺の作品は完成しないから」



芹梨がいるから、沸き上がって来る沢山のイメージ。

そのひとつひとつが全て芹梨に還元したいと叫んでいる。


今俺が作るドレスは、芹梨しか着れない。


…耳が聞こえない芹梨もひっくるめて、今の芹梨しか。