僕のミューズ


「…ごめん」


目を反らす事なく、俺も真剣に、そう言った。


「モデルは…もう、決めてるから」


俺の言葉を聞いて、あかりの表情が険しいものになる。

「…あの子?」
「え?」
「芹梨って子?」

あかりの口から芹梨の名前が出たことに、俺は驚きを隠せなかった。

「何で…」
「ショーの前に圭吾達と一緒にいるとこ見て、声かけたの。海で見た子だってわかったから」

そう言って、あかりは真面目に続けた。


「耳、聞こえないんでしょ?」


俺はその言葉に、ガツンと頭を殴られた衝撃を受ける。

もし今あかりが少しでも真面目に言ってなかったら、胸ぐらを掴んでいてもおかしくはなかった。


ただ、あかりが真剣に言っていたから、俺は拳を握りしめる事だけに抑えた。


「…だから何だってんだよ」
「そんな子に、ショーモデルが務まるの?あたし、実際に歩いてどれだけ周りの音とか音楽とかリズムが大事か、よくわかった。それが何一つ聞こえないなんて、賭けもいいとこだよ」


あかりから紡ぎ出される言葉。

それはまるで、芹梨本人から言われた言葉の様に感じた。