…いつ、来たのだろう。
帰って来た時はビニール袋はなかった。
だから、来たのは俺とあかりが家にいる間。
俺達の声が聞こえたのか?
一瞬思ったが、すぐにそれはあり得ない事に気付く。
二人が部屋に入るのを見たのだろうか。
だから何も言わず、差し入れをドアノブにかけて帰ったのだろうか。
この雨の中、どんな気持ちで家に来たのか。
どんな気持ちで、これを置いて帰ったのか。
芹梨は、どんな気持ちで。
「芹梨っ!」
交差点で、その名前を呼ぶ。
この豪雨の中、誰も外には出ていない。
目を凝らしても、あの綺麗な黒髪は見えなかった。



