あかりの言う事はわかる。
あかりと付き合っていた頃の俺なら、今頃あかりを押し倒しているはずだ。
でも今は、そういう気分になれない。
そういう物を、今は求めていない。
「…好きな奴がいるのに、お前を抱けない」
くっと、あかりの眉間にしわが寄った。
その瞳が、俺を睨み付ける様に刺してくる。
「あたしと付き合ってた時は…そうじゃなかった」
そう小さく呟いて、あかりは立ち上がった。
その場で躊躇いなく服を脱ぎ捨てる。
急いで俺は起き上がったが、あかりはそのまま半乾きの自分の服をまとった。
鞄を手に取り、ベッドの上に起き上がっている俺に向かって言う。
「遥…変わった。ムカつくくらい、変わったよ」
見下す様に睨みつけた視線を剥がし、そのまま玄関へと駆け出す。
俺は追いかけたが、あかりはそのまま勢い良く玄関を飛び出した。
ドアを開けたと同時に、がさっと何かが廊下に落ちた音がする。
ビニール袋が落ちる音と、何か瓶が床に触れる音。相反する両音が、雨の音と混ざった。
あかりは立ち止まり、俺もまた玄関に出る。



