「…何?」
目を開けると、目の前にあかりがいた。
両手を俺の肩の横についている。
端から見たら、俺が押し倒されている様に見えるだろう。
着ているシャツは男物だから大きく、ゆとりのある首もとからは弾力のある二つの山が谷間を見せている。
ストレートの茶色い髪が、俺の耳をくすぐった。
「…遥」
あかりはその丸っこい唇で、俺の名前を呼ぶ。
少し甘えたその声に、前は揺らされていた事を思い出す。
「ね、しよっか」
メイクを施していないその顔は、だからこそ普段にない色気をまとっていた。
ふわりとあかりの指先が俺の髪を撫でる。
そのままゆっくりと輪郭をなぞり、唇にそっと触れた。
雨に濡れて冷えた体。
冷たい唇が、あかりの指先の体温を感じる。
ゆっくりと、あかりの影が俺の全身を覆っていった。
「やめろよ」
唇が重なる直前、俺は小さく呟く。
その瞬間、あかりの動きが止まった。
触れるか触れないかの距離で、あかりの唇が動く。
「何で?」
「お前とやり直す気はもうないから」
「遥、そんなん気にしなかったじゃん。別に、今日だけでもいいんだよ」



