(ライ様…)

人から産まれた者は、こんなにも苦しむのか。

サラはライの死後、赤星浩一の境遇をライと重ねていた。

しかし、同じ太陽のバンパイアであり、人間から産まれたという接点だけで、後は似ていない2人であるが…人のいう種への悲しみは、いっしょであると思っていた。

「ふぅ」

サラは軽く息を吐くと、これ以上考えるのを止めた。

ライは死に、赤星浩一は敵である。

今、自分ができることは…ライの娘であるアルテミアに仕えることだけだ。

(邪魔するならば)

サラは、ギラとは反対方向に歩き出した。

そして、玉座の間に入ると、3人の騎士団長を睨みつけた後、エミナに告げた。

「エミナ様!赤星浩一のことは、私にお任せ下さい。やつとは、何度も戦っております故に」

「駄目だ!あたしが、倒す!例えお父様と言えども、我が軍に逆らうならば!」

エミナは翼を広げると、赤星浩一を探す為に、玉座の間から飛び出そうとした。

「無駄です。今のエミナ様では、勝てません」

「な、何を!」

サラの言葉に、エミナはキレた。

「教えて差し上げましょう」

サラが頭を下げた瞬間、エミナの翼が粉々になった。

「な」

唖然としている間に、サラはエミナの前まで移動していた。

「本気でやってください」

「なめるな!」

エミナの両目が赤く輝き、一気に魔力が上がった。

「エミナ様!」

3人の魔神が、立ち上がった時には、決着はついていた。

床に倒れ、動けなくなったエミナを見下ろしながら、サラは言った。

「鍛えて差し上げます。アルテミア様のように」

「く!」

エミナは倒れながら、悔し涙を流していた。

その様子を見つめながら、3人の魔神達は衝撃から動けなくなっていた。

魔力は圧倒的に、エミナが上だった。

しかし、結果は一瞬で、惨敗。

その事実を目にした魔神達は、強さとは何かを己に問うことになった。