「くそ!」

最強の女神と自負していたエミナは、赤星浩一にまったく敵わなかった事実に、唇を噛み締め、玉座の間の壁を叩いた。

それだけで、城は揺れた。

「…」

そのそばで控えながら、頭を垂れるアクアメイト達…3人の騎士団長。

その様子を見ていたカイオウは、深々と頭を下げると、玉座の間から出た。

「御免」

もう一度エミナの背中に頭を下げてから、回廊を歩き出した。

すると、すぐそばの壁にもたれているギラとサラを発見した。

カイオウと2人は頷き合ったが、会話をすることはなかった。

2人の前を通り過ぎ、カイオウの背中が見えなくなってから、ギラが口を開いた。

「それにしても…エミナ様には困ったものだ。あの気性は、やはり」
「それよりも、赤星浩一のことだ」

サラはギラの言葉を遮ると、目の前の空間を睨み、

「やつは元々人間。と考えると、今回のやつらの行動を理解できる部分もある。しかし!それでもだ」

唇を噛み締めた。

「フン」

サラの言葉を聞いて、ギラは鼻を鳴らした。

そして、珍しく不機嫌な顔を浮かべ答えた。

「あやつは、甘い。大方…人質でもとられているのだろうよ」

「そうなのか?」

サラは、目を見開いた。

「恐らくな」

ギラはそう言うと、壁から離れた。

「下らんな。そのようなことで、縛られることはあるまいて。あやつが、本気になれば、人間どもなど皆殺しにできるだろう?」

サラの疑問に、ギラは肩をすくめた後、廊下を歩き出した。

「俺は、人間のことなど知らん。ただ強いやつには、興味があるがな」

ゆっくりと歩くギラの背中を見つめながら、サラはあることを思い出していた。

向日葵畑の中で、ライの分身であるバイラが、サラに言った言葉を…。

(悲しい程…人を愛している)

その言葉の奥を、サラは読むことができなかった。

なぜならば、サラは魔神で…魔王であるライは、人間の母親から生まれたからだ。