「お、お前は!」

後ろから聞こえたレーンの驚きの声に、九鬼は慌てて振り返った。

その瞬間、九鬼の目に飛び込んできたのは、懐かしい背中であった。

「ど、どうして…お前がいる!」

レーンは叫んだ。

九鬼に突き刺すはずだった剣先を、指で摘まんで止めたのは、女子高生であった。

しかし、ただの女子高生ではなかった。

レーンは、押し込もうとしてもびくともしない剣に、歯軋りした。

「あ、あなたは!」

九鬼は、その女子高生の正体がわかった。

「カレン」
「カレン・アートウッド!」

2人が同時に、名前を呼んだ。

伝説のティアナ・アートウッドの姪にして、ジャスティン・ゲイの愛弟子。

その強さは、人類の中でも最強の部類に入り…魔神とも互角と言われていた。

「真弓…」

カレンは振り返ることなく、九鬼に話しかけた。

「あんたに頼みがある」

「え」

驚く九鬼。

「お、お前達!」

レーンは動かない剣を離すと、どこからか再び新たな剣を取り出し、カレンに襲いかかった。

「私を無視して、話すな!」

「じゃあ…」

カレンは指先に挟んだ剣を捨てると、一本前に踏み込んだ。

その瞬間、踏み込んだ足に力を込めると、手の甲を鎧の表面に叩き込んだ。

「黙っていろ」

「な…」

叩き込んだ手を中心にして、渦のような波紋が広がると、レーンはその場で崩れ落ちた。

「別に…中身だけにダメージを与える方法はあるさ。オウパーツのように触れないなら、無理だかな」

カレンは倒れたレーンに一瞥をくれると、振り向いた。

「!」

その目に起き上がった二体の鎧の姿が、映った。

「成る程…。しかし」

九鬼は飛んだ。

「こいつらは、違うな?」

「ああ」

頷いたカレンの膝が、タイタンの鎧に突き刺さり、九鬼の蹴りがエンケラドゥスに突き刺さった。

また粉々になった鎧の中から、軍人達が出てくると、前のめりに倒れた。