どうして奈緒子は泣いているのだろう?
戸惑いを隠せない僕は一歩奈緒子に近づいた。



「奈緒子…泣いてるの?」



「泣いてなんか、いないよ」



奈緒子は慌ててセーラー服の袖で涙を拭く。
ほら、やっぱり泣いていたんじゃないか。
嘘なんかつかないでよ。



「…大丈夫?」



「うん…大丈夫。ごめんね、勝手に取っちゃって…」



うつ向きながら僕に星形の折り紙を渡した。
それを受け取ろうとしたとき、奈緒子が僕を見上げた。
アルパカのような真ん丸な奈緒子の瞳が涙で少し潤っていた。



「流星くんは…莉子ちゃんのこと好きなの?」




なに…その質問。
いきなりすぎて頭がついていけないよ。
風がぴゅうっと僕たちの間を吹き抜けていく。



「…何で?」



「ヤキモチだよ…」



「何で奈緒子がヤキモチを妬くの?」




人間の心が見えたらどれだけ楽だろうか。
僕に魔法が使えたら、誰かの心を覗いてみたいと思う。




「…流星くんのことが好きだからだよ」