「ちょっと待って花音。あとで花音のクラスに行くから」



それだけ伝えて僕は花音の電話を切った。



「落ちたよ?これはなぁに?」


「あぁ、昨日母さんの部屋から見つけたんだ」




莉子からその折り紙を受け取ろうとした時、僕より先にそれを奪った人がいた。
僕は驚いてその犯人を見る。
それは目を丸くさせ、止まったままの奈緒子だった。



「…奈緒子?それ、返して?」



僕が言うと奈緒子は「ダメ」と言ってその場から逃げるように走って行った。
訳も分からず僕は奈緒子のあとを追いかける。


くそ、奈緒子は陸上部だったんだ。
県大会にも出場するくらいのランナーだってこと忘れていた。

朝陽の差し込んだ廊下をひたすら走っていく。
行き着いた場所は屋上だった。



「奈緒子、それ…返して?大事なものなんだ。」



屋上は目を細めてしまうくらい眩しかった。
その中を奈緒子は僕に背中を向けて立っている。
するとくるりと僕の方を向いた。


きらりと光るもの。
それは奈緒子から零れる…



涙だった。