父さんの部屋を出て僕はゲストルームに向かった。
皺ひとつないシーツの上に腰を下ろす。
そして体をベッドに預けた。
手の中の写真を見る。
うん、やっぱり僕はこれを見たくない。
今じゃない気がするのだ。
「……約束ね」
“あの約束を覚えていますか?”
この言葉の意味することは?
僕が真実を知るのはまだ先のことだった。
…爺ちゃんの家には日曜日までお邪魔した。
何度もお気に入りの場所に行っては空を見上げた。
そして父さんの部屋に入っては母さんとの想い出の空間に浸っていた。
「じゃあそろそろ帰るよ、爺ちゃん、婆ちゃん元気でね。また遊びにくるから」
そう笑顔で別れを言うと爺ちゃんはあの優しい笑顔で僕を見た。
「あの写真集は持ったか?また自分を見失いそうになったらここへ来なさい。気をつけてな」
「うん、またね」
僕は手を振って温かい地上へと降りた。
その空気はたちまち僕の体を暖かくする。
写真集の入った紙袋を持って駅に向かった。


