リビングに残された僕は手に持った写真集を見ることなく二階へと向かった。
そして父さんが以前使っていた部屋のドアノブに手を掛ける。
ゆっくりドアを開けるとその部屋は父さんが結婚する前の時間で止まっていた。
父さんと母さんが結婚したのは高校を卒業してからすぐのこと。
その数年後に僕が生まれた。
部屋の中に入り、周りを見渡す。
壁には幾つもの写真。
そして天井には空の写真が貼られていた。
父さん、聞きたいことがあるんだ。
父さんは母さんを愛していた?
ふと机の上に視線を向けるとそこには学生時代の父さんと母さんの写真があった。
カメラのレンズに向かって笑顔を作る二人の姿を見たら胸が苦しくなった。
一体この写真集には何が隠されているのだろう。
気になったけれど僕は見たくない。
二人の想い出は色鮮やかなままがいい。
もし僕がこれを見てしまった瞬間に綺麗なままの想い出が消えて無くなってしまうのならそうしたくない。
きっと母さんは悲しむだろうから。
そうでしょ?母さん。


