この世界は残酷なほど美しい



ますます父さんが許せなくなってきた。




「結婚記念日だったのなら何で来なかったの?おかしいじゃん。あんなに母さん、寂しそうだったのに…」




「ちょっと待ちなさい。」




爺ちゃんはこう言って本棚から一冊の本を取り出した。
そしてそれを僕に差し出す。
それは父さんの写真集だった。真っ白の表紙には“Memory”と書かれていた。
シンプルすぎるその本の帯にはこういう文字たちが並ぶ。



“あの約束を覚えていますか?”



僕には意味がわからなかった。



「なに、これ」




「見てみれば分かるさ。父さんがあの日来なかった理由を。違うな、父さんはあの日来てたんだ。だけど美羽の最後を見れなかったんだ。この意味がわかるか?」




「全くわかんない。」



「そうだな、今の流星には分からないかな。大丈夫、そのうち分かるから。さぁ寝る支度でもするかな」




爺ちゃんはグラスに残っていたビールを飲み「よいしょ」と言ってリビングを後にした。
そんな爺ちゃんの背中にこう投げかける。




「僕、見ないよ。この写真集。もしこの中に何か隠されてるなら僕は今見たくない」






だって、僕はまだ未完成だから。