この世界は残酷なほど美しい



爺ちゃんは視線を持っていたビールグラスに移し静かにこう言った。


僕と父さんが不仲なことは爺ちゃんは知っていた。
だから僕が遊びに来るたびに聞かれるのだ。
爺ちゃんは自分の息子と孫のことだから心配するのは当たり前だ。
でも正直、何も変わってはいない。



「今ヨーロッパに行ってる。別に今までと変わらないよ。特別仲が良いわけでもないし、特別仲が悪いわけでもない。普通だよ。でも僕は父さんを許してはいない。」




僕は婆ちゃんが持ってきた麦茶に手をつけた。
その味はやはり自分の家の麦茶とは全然味は違っていた。



「なんで流星は許せないんだ?」




なんでって…分かってるはずでしょ?
父さんは母さんが死ぬときに来なかったんだよ。




「…だって母さんが。」




「流星、あの日…美羽さんが亡くなった日、実は二人の結婚記念日だったんだ。」




「え?」




初めて聞かされる真実。
結婚記念日だったのなら尚更来ないのはおかしいじゃないか。