莉子はそのまま言葉を続けた。
「誰かに好きになってもらうことはすごいことなの。両想いになるのはそれよりずっとすごいこと。でも両想いより人を好きになることを誇りに思ったほうがいいと思うの。あたしは誇りに思ってる。人を好きになるってことはね、大切なことなの」
こう言い終えた莉子がなんだか眩しかった。
僕が寂れているのか、僕という人間が小さいのか。
莉子の言葉を全て受け入れるほど心には余裕がなかった。
僕は人より一歩手前にいたと思っていた。
だけど今気づいたよ。
人より遥かに遅れていた。
「…僕は人を好きになったことがない。」
「焦ることなんかないよ。流星は自分のペースを保っていけばいいんだよ。好きな人を焦って作ろうとしても自分の気持ちを見失うだけだよ。」
「う…ん」
「大丈夫だよ。流星ならきっと素敵な人を好きになると思うな」
最後に莉子は満面の笑みを僕に向けた。
それを見た僕の体は熱く火照った。
でも不思議と、そんなおかしな僕が嫌いではなかった。


