さっきから心臓の音がうるさく鳴っている気がする。
次第に息を吸うのにも難しくなってくる。
そして手には汗が滲み出る。



「好きな人には逢わないの?」


「逢わないよ。だってまた逢えるって信じてるから。それに今逢ったらダメな気がするの」



「どうして…?」



「あたしは今自分の価値を探してるから…」




心の刺さった何かがすうっと抜けていく。
今まで痛かったものがこんなにも簡単に抜けていった。
これは誰のおかげ?


目の前にいる莉子のおかげだった。

僕も8歳の頃から自分の価値を探していた。
でも10年経っても見つからなくて。
でももう少しな気がした。
ゴールまであと少しだと思った。


僕はぎゅっと手を握り、震える唇をゆっくり動かす。


ずっと気になってたんだ。





「…好きってなに?」




人間が“好き”と思うときってどういうとき?
好きという感情はどういうこと?




僕に生まれたこの感情って…なに…?