日記はずっと消えない。
その言葉が僕の体を巡っていく。
血液が体全体に栄養を送るように。
そしてゆっくりと呼吸するように。
僕は一秒、いや二秒くらい時が止まった気がした。
「流星?」
「あっごめん、考え事してた。そっか…そうなんだ」
「どうしてそんなこと聞いたの?」
自分の席に着いて莉子の方に体を向けた。
「さっき奈緒子に聞かれたんだ。その時は答えが見つからなくて。でも莉子の言葉を聞いたら納得できたよ」
にっこりと笑うと莉子も笑った。
二人の間に流れる空気が温かい。そんな空気が心地よかった。小春日和だからか、それとも莉子がそうさせているのか。
どっちでも僕には良かった。
「あたしも日記書いてるよ。例えば今日食べたご飯のこととか嬉しかったこと。それと…好きな人のこと。」
そう言い終えたあと、莉子は少しだけ寂しそうな表情をした。その表情を見た僕は何だか悲しくなった。


