この世界は残酷なほど美しい



隣の奈緒子はそれ以上僕に何も言うことは無かった。
僕も問い詰めることなく聞き流した。
それから僕たちは会話することなく職員室に向かった。




「あっ、忘れ物」



僕が職員室のドアに手を掛けたとき、奈緒子突然こう言った。すると僕に背中を向ける。



「え?」


そして一目散に階段を駆け上っていった。
人影のない職員室の廊下に取り残された僕。



「…どうすればいいの?」



意味が分からない。
行き場のない感情はどうすればいい?
職員室の前で立ち止まっていると後ろから声が聞こえてきた。この声は沢村先生だ。



「流星、こんなとこで何やってるんだ?」




「えっ先生が僕を呼んだんじゃなくて?」




先生に聞くと先生は首を傾げて何か考えていた。
そして眉間に皺を寄せて僕を見た。



「俺は呼んでないけど?」




「え、でも…」




奈緒子に言われて僕はここに来たのだけど。
じゃあこれって奈緒子がついた嘘?