この世界は残酷なほど美しい



きっと気のせいだ。
そうしておこう。



「ふぅん。好きな人ね…」




莉子は好きな人がいるんだ。
やっぱりみんな恋してるんだなぁ。
置いてきぼりは僕だけか。



「流星は誰からこの言葉を聞いたのですか?」



「お母さんが教えてくれたんだ。もう居ないけどね」




あぁヤバい。
母さんのこと思い出したらちょっと泣けてきた。
僕はアスファルトに映った自分の影を見つめた。
背中を丸めて悲しそうに見えるそれは、さらに僕を寂しくさせた。



「そうなんですか。お母さんは素敵な言葉を残してくれましたね。あたしこの言葉聞いて星が大好きになったの。だからずっと星の近くにいたいの」




「僕も星大好きだよ。よく天体観測するし、大学も天文学部に進むつもり」




そう言うと莉子は「えっ」と声を漏らし、目を丸くさせて僕を見つめた。




「あたしも!あたし天文学部に行こうと思ってる!」




「もしかして…」




次の瞬間、僕と莉子の呼吸が一致した。




「T大の天文学部!!」