それを教えてくれたのはキミだった。
「…えっとどこかで逢いました?あたしすぐ忘れちゃう癖があって。」
彼女の発言に驚きを隠せない。そんなはずあるかって思っているせいか。
だってまだ24時間も経っていないんだぞ?
なのに知らないって…
まぁいっか。
彼女にとって僕はそれくらいの存在ということだ。
別に悔しいわけじゃない。
かえって光栄です。
「まぁいいや。僕の名前は坂井流星。よろしくね。」
彼女は僕の隣の空席に座って鞄から一冊のノートを取り出した。
「坂井…流星。坂井くんって呼べばいいかな?」
「坂井くんはやめて?なんか小学生みたい。ちょっと歯痒いっていうか。みんな流星って呼んでるから流星でいいよ。僕は莉子って呼ぶから」
僕の平凡だった生活に彼女、安野莉子が加わった。
莉子は僕にとって小さな希望だった。
「流星…いい名前ですね。流れ星の意味を知っていますか?」
きっとね、思うんだ。
莉子に逢わせてくれたのは母さんじゃないかって。


