「先生、ずりーよ!面倒なら俺が見るし、何で流星なんだよ」



先ほど張り切っていたクラスの男子が先生に文句を放った。
すると先生は「お前には下心があるからだ」と言う。
するとクラスは笑い声で溢れ返った。



近づいてくる安野莉子。
きっと僕のことは覚えているだろう。
だって昨日の今日だし、忘れるなんて…そんなこと…。




「初めまして、安野莉子です。莉子って呼んでください」



「えっ……」




まさか…以上?
それ意外何か言うことないの?本を拾ったのは僕だよ?
会話だってしたじゃないか。




「…ん??」



「僕のこと、覚えてないの?」



自分でも驚いてしまう。
自分からこんなことを聞いてしまったことに。




毎日知らない誰かとすれ違って、会話もせずに通りすぎて、だけどそれは奇跡みたいなものだ。

誰にも逢わない日々などない。

人間は常に人間に一番近い存在だった。