この世界は残酷なほど美しい



できることならばあまり人とは関わりたくないのに。
だが先生は「人に触れてみろ」と言う。

正直僕はこのままで良いと思ってた。
それなりに友達はいるし、それなりに日々充実しているし、今の僕に何かが加わったら、僕は僕で無くなってしまうのでは無いかと思う。


転校生の書類を蓮がひょいっと取り上げた。
そして名前を読み上げる。



「…安野莉子ね、可愛い名前じゃん。いつ転校生してくるの?」




「明日だってさ。僕休もうかな」



「休んだら沢村が許さねぇだろ。アイツ怒ったら怖いから」



蓮の言葉に納得する僕。
もしそうなったらきっと父さんの耳にも入るだろう。
そんなことは絶対に避けたい。だから明日は何としてでも学校に来なきゃ。


僕は蓮から書類を受け取り、春の空気に包まれた教室へ入った。



そして時間は過ぎ、夕方となった。




「流星、俺花音と約束があるから。また明日な」



「うん、また明日」




蓮は僕にこう言って足早に教室から出ていった。




「…流星くん」



声がしたので見上げるとそこには奈緒子が立っていた。