この世界は残酷なほど美しい



先生は鼻歌を歌いながら僕から離れて行った。
視線を書類に移す。
その書類を見て疑問に思った。なぜならば経歴の欄が空白だったから。
書かれているのは名前と自宅住所と電話番号のみ。


安野莉子とは何者なのだろう。


「流星?どーかしたか?」



はぁ…とため息を漏らしている僕に近寄って来たのは能天気な蓮だった。



「なんか面倒なこと頼まれちゃったみたいなんだ。」




「ふぅん、で処分はどうなった?」




「だから面倒なこと頼まれたから処分は無しってこと!」



蓮を睨み付けると驚いた表情を見せた。



「へ?まじで?ってことは停学無しってこと?それずるくねぇか?昔、俺が体育倉庫でイチャついてただけで停学三日間だったのに?何だよそれ!」



蓮は時々可笑しなことを言う。それを自分で分かっているのか謎だけどそういう時は何も言わない方がベストだ。




「僕は停学でも休学でもどっちでも良かったのに。先生が脅すから」



「で?面倒なことって?」



「転校生の面倒を見ること」



僕はそう言ってがっくりと肩を下ろした。