入学式の前日、よく眠れなかった。
ウキウキ2割、ドキドキ8割。
もし流星くんが違う高校を受けていたらどうしようと思ったがその時はその時だ。
だけど私は見つけてしまうの。学校内であなたの姿を。
見つけた瞬間、飛び上がるほど嬉しくて、周囲に心の声が聞こえていないか不安になった。
久しぶりに見る流星くんは確実に大人へと成長していた。
少し癖のある黒髪も、二重ラインがくっきりとした瞳も、白い肌も、あの頃のままだった。
でも……
「流星くん……」
あなたは…。
「どうしちゃったの…」
どこに忘れてきてしまったの?
私はあなたのその…
「笑ってよ…」
笑顔が大好きだったのに。
春さんが言っていたことはこのことだった。
流星くんはあの日笑顔も失ったのだ。
久しぶりに見る流星くんは昔の面影などなく、ただただ息をしている人間にしか見えなかった。
“あの子が大人になったら渡して欲しいの”
お姉さん、私の知っている流星くんはどこかに行ってしまったみたいです。
だから…まだ渡せないよ。
流星くんが心から笑えるようになったら渡すから…
それまで待っていて。


