この世界は残酷なほど美しい



小さい頃から両親は不仲で、あまりお母さんと遊んだ記憶が無くて。
だから勝手に美羽お姉さんがお母さんだったらいいなって思ってた。
きっとお母さんと遊ぶときはこんな感じなのかなぁって。


だから…ちゃんと言いたかったんだ。



「ありがとう」って。




「……あのね、奈緒子ちゃん。」




春さんは聞き取りにくいくらい小さな声で私を真っ直ぐ見つめた。
そしてゆっくりと言葉を並べる。
それはあまりにもショックすぎて。
私の頭の中は真っ白になった。


「美羽は、あの年の7月7日に亡くなったんだ。」




「……え」



それはあまりにも小さすぎる声だった。
まるで今にも消えて無くなってしまいそうな声だった。



美羽お姉さんが…死んだ。
命日は私と約束した一週間後。


まさか、そんな。
そんなわけないよ。



だって、だって…
だって…だって…!!



私…「ありがとう」も伝えてないのに。