この世界は残酷なほど美しい



名前を呼ぶと私の方に顔を向けた。
だけどやはり外見が変わってしまったせいか一瞬では私のことが分からなかったようだ。



「え…と、誰かな?」



「私です!馬渕奈緒子!」



今では乾奈緒子だけど、旧姓で言った方がすぐに分かってくれそうだった。
私がこう言うと春さんは目を丸くさせて驚いた表情を見せた。


「あぁ!奈緒子ちゃん!大人っぽくなってたから分からなかったよー!どうしたの?元気にしてた?」



笑顔で私を見つめる春さんに嬉しくてたまらない自分がいた。大人に近づいてる?
それならば流星くんに逢える日はもうすぐそこだ。



「お久しぶりです!元気でしたよ!お父さんが退院してから他県に引っ越しちゃったんでなかなか来れなかったんだけど……。あの、美羽お姉さんって今どこに居ますか?」




一瞬だけ、春さんの表情が止まった。
私はそれを見逃すことはなかった。


美羽お姉さん…、私ね…
秘密にしていたことがあるの。


私…お姉さんのこと本当のお母さんみたいに思ってたんだ。