この世界は残酷なほど美しい



だけど私には言うことがあった。


短冊を書き終えた私たちはしばらく屋上で折り紙をしたりトランプをしたりして遊んでいた。だけど夕方になると遊び疲れた私たちは屋上を後にすることにした。


二人肩を並べて階段を下りていく。


もう、流星くんに逢えなくなる。
私はそんな悲しみに押し潰されそうになった。
それが涙となり頬を伝っていく。



「奈緒子?どうかしたの?」



「流星くん…あの…あのね…もうすぐね…お父さんが退院するから…もう病院には来れないの」



「え…じゃあもう…遊べないの?」



流星くんの問いかけに私は涙声で「うん」と頷く。
涙で歪んだ視界には寂しそうな表情をするあなたがいた。



「だから……」



「さよならなんて…僕は言わないから。」




「…え?」




「僕はまた奈緒子に逢いたい。逢えるって信じてるからお別れなんて言わないよ」



そう言ったあと流星くんは私を強く強く抱きしめた。




「奈緒子、また逢えるよ。だから…また遊ぼうね」




こんなにも人間は温かいのだと感じたのは久しぶりだった。
だからだろうか。
また逢えると思ったのは。



託された想いを、逢えると信じたその日を、私はずっとずっと追いかけていた。