この世界は残酷なほど美しい




流星くんに背を向けて書いているとやはり流星くんは私の短冊を盗み見しようとしていた。



「ダメだよ!これは秘密なんだから」




「ちぇっ、奈緒子のケチ!」




ふて腐れた流星くんは何か考え事をしてから短冊を書いていた。真剣な表情が美羽お姉さんにそっくりだった。


書き終わった私は背の高い春さんにお願いをする。



「春さん、この短冊流星くんに見えないように高いところに結んでくれる?」



「いいよ、分かった」



春さんは嫌がることなく短冊を希望通りの場所に結んでくれた。
これなら流星くんも見えないはずだ。
私は笹の葉を見上げる。
揺れる音は神様を呼んでいるように聞こえた。




「春さん、僕のもー!」




流星くんも書き終わったのか短冊を春さんに渡していた。
何て書いたのかは見なかった。見てしまったら美羽お姉さんと流星くんの想いが消えてしまいそうで怖かったから。



短冊はいつまでも揺れていた。
そのたくましい姿に心を打たれていく。