「お母ーさん!あ、奈緒子もいるー!」
突然病室に入ってきたのは元気な流星くんだった。
最近流星くんは私のことを「奈緒子」と呼び捨てにする。
そんな些細なことが嬉しくてたまらない。
私は慌ててその「秘密」をリュックの中に隠した。
「何してたのー?」
そう流星くんに聞かれたので私とお姉さんは顔を見つめてから「秘密」と答えた。
「何だよ、それー。まぁいいや。奈緒子、屋上行こうぜ、短冊書けるらしいんだ」
流星くんは私の手を引っ張り屋上へと駆けていく。
ちらっと後ろを見ると小さく笑うお姉さんの姿。
それを見た瞬間どこか苦しくなった。
だけど一番苦しかったのは目の前にいる流星くんだったんだ。
「流星くんは何て願い事するの?」
屋上までの階段はかなりキツイ。
まだ体がちゃんと出来ていない私たちはゆっくりと上っていく。
「お母さんが居なくならないようにってお願いするんだ」
初めて触れた瞬間だった。
いつも笑っている流星くんの裏側に。


