この世界は残酷なほど美しい



教室のドアに手を掛けたとき奈緒子が大きな声でこう言った。


「流星くんは私にとって大事な人だから…」



照れながら言う奈緒子に俺は何も返せなかった。
何を言ったらいいのか言葉が見つからなかった。


ただこれだけ言ったのを覚えてる。



「へぇそうなんだ。」




特別な感情など自分には生まれてこないと思ってた。
だけど奈緒子は大事なことを隠し持っていた。


僕の運命が傾いていく。
良い方向なのか、それとも悪い方向なのか。
それは今の僕には分かるはずもなかった。
この先、僕は笑うだろうか。
もしくは泣くのだろうか。
それを知るのは未来の僕だけだった。



教室のドアを開き、足を踏み入れる。
現代文の授業中だったため教室はあまりにも静かだった。
だから僕と奈緒子はクラスメートの注目の的だった。




「坂井、沢村先生にこっぴどく叱られてきたか?乾、お前は堂々とサボりか?二人とも席に着け」



「すいません。」「はい。」



僕たちは同時に返事をし、席に向かった。
僕の席は窓際の席。
後ろは蓮だ。



「流星、大丈夫だったか?停学とかになる?ビックリしたよ、お前が野中を殴るなんて。」




いやいや、ビックリしてるのは僕自身です。