この世界は残酷なほど美しい



七夕祭りは休日だったため私は早く準備をして病院に向かった。
玄関で買ってもらったばかりのピンクのサンダルを履いていると後ろから叔母さんが歩み寄って来た。



「奈緒子ちゃん、お父さんもうすぐ退院ですって。月曜日にはお家に帰って来れるらしいわよ。そう昨日先生が言っててね」



「……そ、うなんだ」



どうしてだろう。
上手く、笑えない。



「良かったわね。」




どうしてだろう。
嬉しく、無い。



「行ってきます…」




私は折り紙を持って家を出た。
笑えない理由、嬉しくない理由、その理由を一番分かるのは私自身。
理由は、流星くんに逢えなくなるから。
こんなことを言うのは最低だ。でも正直…お父さんにはまだ入院しててもらいたいと思っている私がいる。

だって、嫌だよ。


離れたくない。
私は勢いよく走った。



病院に着いた頃には靴擦れをおこしていた。