この世界は残酷なほど美しい



何故顔を真っ赤にするのか。
悲しいとき泣きたくなるのはどうしてか。
嬉しいとき自然と笑顔が溢れるのはどうしてか。


僕は喜怒哀楽の、怒と哀しか経験したことが無い。
怒は今さっきのこと。
哀は過去のこと。


喜と楽は経験しなくて良いと思っていた。




「ねぇ、流星くん。私ね」



奈緒子はそう言って僕を見上げた。
その横顔にどこか女の子らしさん感じる。
って奈緒子は女の子だから当たり前か。



「ん?なぁに?」



「流星くんのこともっと知りたいの。」




「……知らない方がいいよ」




僕は臆病だから。




「え…何で?興味のある人を知りたいって思ってはいけないこと?」




「ううん、そうじゃない。だけど僕のことは知らない方がいい。幻滅するよ。」




そう言って教室へ向かっていく。
奈緒子は諦めが悪かった。
これだけ言っても聞かなかった。
僕のあとをついてきて何度も何度も同じことを言う。



「私にとって流星はキラキラ輝いてる存在なの」



止めの一発。
だけど僕にはかすり傷程度にしかならない。
僕は奈緒子の方に振り返り笑顔でこう言った。




「じゃあキラキラのままでいいよ。僕のことを知ったらキラキラが消えちゃうから」




そして静まる教室へと向かって行った。