すると先生は俺の肩を触り、真剣な眼差しでこう言った。
「人間は人間に触れてようやく人間になれるんだ。」
「意味が分からないよ?」
「その意味を探してみろ。見つかったとき流星の中がきっと変わってるから」
僕は返事をしなかった。
「失礼します」と一言だけ残して僕は職員室を後にした。
職員室から出るとそこには奈緒子がいた。
今にも泣きそうな表情をしてこちらに気付いた。
「流星くん!あの…えっと」
「気にしないで。僕が勝手にやったことだから。奈緒子は悪くないよ」
「でも…何で…?」
野中を殴ったのは奈緒子の為なんかじゃないことは自分でも分かっていた。
奈緒子が母さんの残像と重なりあって居てもたってもいられなかった。
ただそれだけ。
特別な何かは無い。
「さぁ、何でだろう?自分でも分かんないや。もうこんなことしないから。奈緒子も元気になってよ。」
僕はそう言って奈緒子の頭をポンっと触った。
すると彼女は顔を真っ赤にする。
僕が初めて人間に興味が湧いた瞬間だった。


